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最高裁判所第二小法廷 昭和51年(オ)523号 判決 1976年10月01日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人小島肇の上告理由第一点について

原審が、訴外奥本七郎は表見支配人として被上告人椎田支店の営業に関する裁判外の一切の行為をする権限を有するものとみなされ、かつ、本件小切手の振出行為は客観的抽象的にみて同支店の営業に関する行為にあたる旨を認定判断していることは、原判決の判文上明らかである。原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用することができない。

同第二点について

記録に顕われた本件訴訟の経過に照らすと、所論の点に関する原審の措置に、所論の違法があるとは認められない。論旨は、採用することができない。

同第三点について

信用金庫法四〇条、商法四二条、三八条一項に基づく信用金庫の責任は、相手方が善意である限り、表見支配人のした行為の目的のいかんにかかわらず、これを免れることができないが、右表見支配人の意図が自己の利益を図るにあり、かつ、相手方が右の意図を知り又は知りうべかりしものであつたときには、民法九三条但書の規定を類推適用して、信用金庫はその行為についての責に任じないものと解するのが相当である(最高裁昭和三五年(オ)第一三八八号同三八年九月五日第一小法廷判決・民集一七巻八号九〇九頁、昭和三九年(オ)第一〇二五号同四二年四月二〇日第一小法廷判決・民集二一巻三号六九七頁、昭和四一年(オ)第八七五号同四二年七月六日第一小法廷判決・裁判集民事八八巻一頁参照)。原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、民法九三条但書の類推適用により被告は訴外奥本七郎のした本件小切手の振出行為についての責に任じないとした原審の判断は、これと同趣旨のものであつて、正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田 豊 裁判官 本林 譲 裁判官 栗本一夫)

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